加留多 / Karuta , 1986 Photography: Koji Honda

植松永次 「芽の出るところ」

Gallery 38
11月5日開始

アーティスト

植松永次
Gallery 38では、植松永次の個展「芽の出るところ」を開催いたします。
1949年に兵庫に生まれた植松は、1970年初頭より様々な土の性質を理解するためにレリーフ制作から始め、その後も拠点を変えながら約53年にわたり土との対話を通じて作品を生み出してきました。現在は三重県伊賀市で制作を続けています。制作について植松は「表現する前に、まず土と向き合う時間がある」と語ります。土そのものが持つ力に耳を傾けながら、伊賀の四季の移ろいとともに手を動かす日々を重ねています。

展覧会タイトル「芽の出るところ」は、本展で展示される植松の作品名から採用しました。ギャラリーが開廊10年目を迎えるこの秋、土の中で静かに生命が芽吹く瞬間を示すこのタイトルは、植松が見つめ続けてきた自然の営みと、ギャラリーとアーティストが積み重ねてきた時間の両方を象徴しています。

植松の作品には、流動する泥の軌跡、焼成によって刻まれた亀裂や歪み、素材が本来持つ質感が色濃く残されています。技法や概念に縛られることなく、土が語りかけてくるものに応答する ー そうした制作姿勢が作品に宿っています。植松は「自分の表現を見せるより、土が持っている美しさ、自然の中にある本質的なものに目を向けてほしい」と言います。私たちが日常で見落としている風景の価値や、途方もなく長い時間の流れを、植松は土の中から掬い上げた形を通じて差し出してくれるのです。
都市で暮らす私たちは、土に触れる機会をほとんど失っています。夜空を見上げても星は見えず、季節の変化さえ感じにくくなっています。近年、植松の作品が私たちの心に深く響くのは、こうした現代の生活環境と無関係ではないでしょう。月、星、土、火 ー 植松が繰り返し口にする、人智を超えた自然の存在。それらと対照的に、私たちの日常はめまぐるしいスピードで変化し、自然との距離はますます開いていきます。効率と速度が支配する日々の中で、何か大切なものを見失っていないか。植松の作品は、そうした問いを静かに投げかけているように思えます。自身の現在地を「ぼんやりと 散歩の途中です」と表現する植松。目的を定めず、ゆっくりと歩を進めるーこの姿勢こそ、今の私たちが取り戻すべきものかもしれません。月の光を感じること、足元の土の感触を確かめること、手で触れること。こうした素朴な行為が持つ力を、植松の作品は思い出させてくれます。

Gallery 38は、2016年の開廊から植松永次と歩みを共にし、国内外で植松の仕事を紹介する機会を重ねてきました。展覧会という場での出会いは一期一会であり、この空間で交わされる対話や関係性は、作家にとってもギャラリーにとっても、かけがえのない意味を持ち続けています。

土と誠実に向き合い続ける植松永次の仕事を、ぜひご覧ください。

スケジュール

2025年11月5日(水)〜2025年12月14日(日)

開館情報

時間
12:0019:00
休館日
月曜日、火曜日、祝日
入場料無料
会場Gallery 38
http://www.gallery-38.com/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-30-28 原宿ホームズ101
アクセス東京メトロ副都心線北参道駅2番出口より徒歩6分、JR山手線原宿駅竹下口より徒歩8分
電話番号03-6721-1505
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