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リー・ベー 「THE IN-BETWEEN」
Lee Bae, Brushstroke S6, 2025. bronze. 106 × 62 × 56 cm. Courtesy of the artist and Perrotin.
リー・ベー 「THE IN-BETWEEN」
ギャラリーペロタン東京
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11月5日開始
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アーティスト
リー・ベー
ペロタン東京にてこのたび開催されるリー・ベー(李英培)の新作展では、墨筆の運びをもとにブロンズで起こした未曾有の彫刻作品シリーズ《Brushstrokes》が展開される。かつて軽やかさと儚さを湛えていた形状は、いまやずっしりと重厚で、幾重にも撚り合わされ、有機的ですらある。そして一閃、空間を開け放つ。床に置かれた作品や壁に突き立てられた作品、中には天井から宙吊りにされた作品もあり、それぞれがその場に柱や結び目、うねる曲線を立ち上げていて、まるで腕の動きが、金属にとらわれていながらも、あらゆる方向へと絶えず伸び続けているかのようだ。増殖するアングルとパースペクティブによって、リー・ベー作品はまっすぐに三次元で受肉される。境界が揺さぶられ、絵画が彫刻となり、多彩な技法は見事に使いこなされていて、創り手として優れて豊かな身振りと言うほかない。あれは椎骨の連なりだろうか?これは何かの骨組み、それとも書棚だろうか?あるいは奇妙な生命体の骨格だろうか?ギャラリーを満たす光の中で、リー・ベー作品は自らを取り巻く空隙と対話している。屹立したり、身をよじったり、かと思えば頭を垂れたり。観る者の立ち位置に応じて壁に、リボンに、はたまた本にと自在に姿を変えるのである。かくして、鑑賞者はひとつの矛盾を体感することになる。金属の密度と身振りの軽み、固定された形式と移り変わるまなざし。そうして展示全体が磁気を帯びた場として作用する。観る者の身体を引き寄せて吸い込んだのち、ゆるやかな、瞑想にも似た揺動へと至らしめるのだ。黒い質量の数々が記号のごとく立ち上がり、その様はトーテム的にしてあえかでもある。何ひとつ語らずして、気配を刻むのである。
また別の展示室では、スクリーンに映像が映し出されている。撮影地は韓国。稲田を舞台にしたパフォーマンスだ。代掻き、つまり田植えに先立って行われる土ならしの儀である。男がひとり-リー・ベー本人だが-青いズボンに白いシャツという出立ちで泥の中に跪いている。男はやがて歩き始める。自らの足で土をどろどろに撹拌しながら進み、表面の水を掃く。大ぶりでありながら精確な、農夫の体さばきである。研ぎ澄まされた眼光と引き締まった手首。手にした箒を自在に操り、あたり一帯を肥やしてゆく。その一挙手一投足がカンバスに向かう彼の身振りと響き合っているのは火を見るよりあきらかである。
動いている身体の力強い存在感と、遠景に佇む丘のひそやかな気配。白鷺さながら水田に直立し、手指は箒の藁束にかけ、剥き出しの足を泥土に覆われて、リー・ベーは文字通り立ち返る。自らの創作の原点たる土へ。身体と身振りへ。泥へ。すべての源泉たる実体そのものへと。そうして帰る。生まれた村へ、自然へ、田畑へと。すなわち、世界の根源を成す真理へと。セルフポートレートであり自らの作風のメタファーでもあるこの映像を通してリーは、農耕に従事する者の身体が持つ力強さと田舎に暮らす者ならではの創意工夫、そして芸術に身を捧げる者の創造力にオマージュを捧げているのである。
そう、稲が芽を出す手前で涵養を待つひとときこそ「閾」であり、まさにin-between(あわい)であり、虚と充のあいだ、下拵えと発芽のあいだのin-betweenな時間なのだ。大地に立ち返るといっても、リー・ベーのそれはノスタルジックな感傷とは程遠い。いわば象徴に依る再起動である。世界の脈動に、自然のゆるやかな循環に、リーは耳を傾け始める。どろりとした土に両の手を浸して、手業に潜在する神聖な境地へと至る。「表象する」のではなく「生ぜしめる」のだ。この儀礼の場に稲田が選ばれたのも偶然ではない。そこは土と水とが鬩ぎ合う地点、「あわい」の性質を際立って強く帯びた空間なのである。あたかも世界そのものがふたつの状態のあわいで呼吸しているかのごとく。そうしてそこに、リーは自らの作風の成り立ちを重ねてみせる。世界を形作る者としての支配的な自己ではなく、世界を構成する要素と慎ましくやりとりするいち媒介として。土と、水と、光を文字通りその身に湛えた媒介として。
今回の展覧会タイトルである『The In-Between』は、リーがこれまでに行ってきた展示(『Between』/於:ペロタンニューヨーク)で端緒を開いた思索の延長線上に位置している。「あわい」たるそこで、東洋と西洋、抽象と物質、身振りと記憶が邂逅するのである。ソウルとパリの二拠点で暮らすリー・ベーはまさに、ひとつの点からもうひとつの点へ、という道程において創作を続けている。ふたつの文化、ふたつの時間軸、幼年期から青年期、韓国の田園からパリのアトリエ。ただし、ここ東京では、白い空間に隆起するその黒色のフォルムは新たに別のメッセージ性を帯びうるだろう。そうして起源と生成を、誕生と再生を語ってくれる。傾聴の場、対話の場、前進と深慮の場、呼吸の場を設えてくれる。アートはひとつの入り口に、世界からべつの世界へと身を遊ばせるための場所となりうるのだと示してくれる。世界中が物騒な光景と極大化する対立に飽和し、数多の虐殺と戦争が身近に繰り広げられているいまこの時にあって、The In-Betweenは「あわい」の力を訴える。そこは世界が生まれなおし、人間と自然が交わりを取り戻して共鳴し、形質が変化し続けてゆく肥沃な場なのだ。
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スケジュール
2025年11月5日(水)〜2025年12月27日(土)
開館情報
時間
11:00 〜 19:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料
無料
会場
ギャラリーペロタン東京
https://www.perrotin.com/
住所
〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
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アクセス
都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅1a・1b出口より徒歩1分
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