左:シアター イメージ 右:相馬千秋
東京都港区に、「港区立みなと芸術センター」がオープンする。開館予定日は2027年11月。この度、プログラム・ディレクターとして、国内外で数々のアートフェスティバルをプロデュースしてきた相馬千秋の就任が発表された。

港区立みなと芸術センターは、浜松町駅直結の公立文化施設。港区の文化芸術の中核拠点として、文化芸術の鑑賞、参加及び創造活動を推進していく。また文化芸術に関わる人材の育成を図り、交流や相互理解、それによる多様性を認め合う価値観を醸成し、区民福祉の向上に貢献するための施設を目指す。
公募により、愛称は「m〜m(読み方:むーむ)」に決定した。
施設としては、客席約600席のプロセニアム形式の劇場、約100人収容可能なホール、ワークショップや稽古に活用可能なスタジオ、練習や打合せに活用可能な多目的ルームなどを備える予定だ。


プログラム・ディレクターに就任する相馬千秋は、アートプロデューサー、キュレーター、NPO法人芸術公社代表理事として、これまで国内外で多様な文化芸術プログラムに従事。演劇やパフォーマンスを軸に、現代美術、社会関与型アート、VR/ARテクノロジーを用いた作品など、領域横断的なキュレーション、プロデュースを行ってきた。フェスティバル/トーキョー初代プログラム・ディレクター(2009〜13)、あいちトリエンナーレ2019および国際芸術祭あいち2022パフォーミングアーツ部門キュレーターなどを歴任、2023年には非西洋圏出身者として初めてドイツの世界演劇祭テアター・デア・ヴェルトのプログラム・ディレクター(芸術監督)を務めた。また港区では、2017年に演劇の力で都市にあらたな「コモンズ(共有地)」を生み出すプロジェクト「シアターコモンズ」を立ち上げ、毎年開催、実行委員長兼ディレクター(2017年〜現在)を務めている。
地域の芸術文化事業にこれまでも大きく貢献してきた相馬だが、今後は同センター主催事業のラインナップ編成を統括する。文化芸術の鑑賞・参加・創造活動を総合的にプロデュースし、国際性、多様性を併せ持つセンターの芸術面を牽引する役割を担う。
Tokyo Art Beatの取材に対し、相馬は今回の就任について以下のメッセージを寄せた。
2027年11月、港区浜松町に、港区立みなと芸術センターm〜mが誕生します。建物はまだ建設中ですが、m〜mはモノや意味ではなく、目に見えない波動のように、すでにそこかしこに発生し始めています。その波動は、「みなと」から陸路・空路・海路でつながる世界中の諸地域はもちろん、時空を超えた複数の時代や場所とも繋がっています。さらにm〜mは、分断に引き裂かれた現代にあって、守るべき人類の尊厳と自由、あらゆる生命や自然との調和の理念を、穏やかな波のように包容してくれるはずです。そこは砂浜のように、誰もが思い思いの振る舞いで過ごし、それぞれの方法で創造性を発揮する場になるに違いありません。
そんなm〜mに共振するすべての人たちと、まだ形なきm〜mを共に作っていきたいと思います。来る11月30日のプロローグイベントは、m〜mの波動を先取りして体験できる「はじまりの出来事」となるはずです。ぜひご参加ください。

この秋、11月30日(日)には、相馬の就任後初の本格的なプロデュースイベントとして「開館2年前 プロローグ・イベント」が開催される。会場は、港区虎ノ門にあるニッショーホール。
当日は開場の10:00から18:00まで、1日を通して大人から子供まで楽しめる充実のラインアップが予定されている本イベント。そのプログラムを紹介したい。
1. プロローグ・トークセッション&コラボレーション・パフォーマンス「Prologue」
当日のメインイベントとして、俳優のサヘル・ローズ、クリエイティブディレクターの箭内道彦、清家愛 港区長と、モデレーターの相馬によるトークセッションを開催。センターの概要やその役割、開館への期待感などを語りあう。トークは英語同時通訳、手話通訳付きで行われる。

さらに後半では音楽家の鈴木優人によるピアノ演奏とともに、アーティスト鈴木ヒラクがその場でドローイングをするライブパフォーマンスを実施。音楽界とアート界のふたつの才能がコラボレーションし、一瞬ごとに生成されていく宇宙を体感するような、貴重なパフォーマンスになりそうだ。トークとパフォーマンス(途中休憩あり)で約2時間を予定している。


2. VRエンターテインメント 谷口勝也 「バーチャル m〜m」
みなと芸術センターはいったいどんな施設になるのだろう? 気になる雰囲気をひと足さきに体感できる、約10分間の没入型劇場VR体験が登場。制作は谷口勝也。セガ入社後、ゲーム開発とリアルタイムコンピュータグラフィックスの研究開発に携わり、近年は多数のVR/AR作品を手がけてきたこの分野の第一人者だ。


3. 演劇ワークショップ 市原佐都子 「m〜mで、も~も」(全4回開催、演劇ワークショップ)
お気に入りの人形やぬいぐるみを使って、誰かとおしゃべりしたり、劇を作ってみることができる、参加型の演劇ワークショップ。人形目線でなら、普段は言いづらいことも口に出したり、言葉を伝え合えるかもしれない。考案するのは、いま世界から熱い注目を集める日本の劇作家・演出家、市原佐都子。演技経験不問で、小学生以上は誰でも参加できる。各回100分程度で、日本語の回、英語の回、中国語の回があり、英語・中国語回ファシリテーターはアーティストのメイ・リウが担当する。

4. レゴ®ブロック・ワークショップ 三井淳平『レゴ®ブロックでm~mをつくってみよう』
世界で24人しかいないレゴ®認定プロビルダー・三井淳平と一緒に、レゴ®ブロックを使って想像をかたちにする、小中学生を対象としたワークショップ。「こんな劇場があったらいいな」というアイデアを自由に表現できる。英語サポートあり。

5. ウォーク 佐藤朋子/今和泉隆行(地理人)
イベントの会場であるニッショーホールから、みなと芸術センターができる浜松町近辺まで、集団で散策する約1時間のウォーキングツアー。案内人は2名、それぞれ別のコースを散策する。リサーチをベースとした創作を手がけるアーティスト佐藤朋子による「オバケ東京ウォーク:いくつかの塔をめぐってm〜mを眺める」と、実在しない都市の地図を描く空想地図作家の今和泉隆行(地理人)の「裏路地から追いかける街の変化」。港区の歴史や地理を、いつもとはちょっと違った視点から体感できるツアーになるだろう。英語サポートあり。


6. ネットワーキング・テーブル
2階大会議室には、当日イベントに参加した感想やセンターへの想いをワールドカフェ形式で語る「ネットワーキング・テーブル」が登場。出入り自由で、英語話者の参加も可能。自分の企画やアイデアの持ち込み、みなと芸術センター開館準備室のメンバーへの相談、関係者との名刺交換などができる、自由なネットワーキングのための場となる。

7. ~砂浜でひとやすみ~出張!みなとコモンズ
砂浜をイメージした空間に、1日限定の「みなとコモンズ」がやってくる。子供から大人まで、誰でも立ち寄れるプレイスペースで、休憩にも利用できる。

タイムテーブルや、アクセシビリティ情報などの詳細は、公式サイトをチェックしてほしい。
2年後の開館が待ちきれないという人や、大人から子供まで楽しめるアートイベントに参加したいという人は、ぜひ11月30日にニッショーホールへ足を運んでみてほしい。
施設名称:港区立みなと芸術センター
愛称:m∼m (読み方:むーむ)
開館時期:2027年11月(予定)
所在地:東京都港区浜松町二丁目3番5号
指定管理者:みなと文化パートナーズ
代表団体:公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団
構成団体:サントリーパブリシティサービス株式会社
建物規模:地下2階地上46階建 (センターは地上3~9階)
諸室:シアター、コモンスペース、スタジオ1~4、ルーム1~2、アトリエ
【お問合せ】 みなと芸術センター開館準備室
〒108-0014 東京都港区芝5-28-4 旧三田図書館4階
電話 03-6809-3631/FAX 03-6809-3632 (平日 9:30〜17:00)