ロン・ミュエク マス 2016-17 合成ポリマー塗料、ファイバーグラス サイズ可変 所蔵:ビクトリア国立美術館(メルボルン)、フェルトン遺贈(2018) 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館、 2025 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館
ロン・ミュエクの個展が、東京・六本木の森美術館で開催される。会期は2026年4月29日~9月23日。
1958年にオーストラリアで生まれ、現在はイギリスに在住するロン・ミュエクは、革新的な素材や技法、表現方法を用いて具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家。人間を綿密に観察し、哲学的な思索を重ねて制作した作品は、人間の複雑な内面や体験を巧みに表現し、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツでの「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展以降、世界各地で個展を開催している。実際の人物よりもはるかに大きく、あるいは小さく造形した彫刻は、神秘的でありながら圧倒的な存在感を放ち、私たちと身体との関係や、存在そのものとの関係を問いかける。


本展は、ミュエクとカルティエ現代美術財団との長きに渡る関係性によって企画され、2023年のパリでの開催に始まり、ミラノ、ソウルを経て、森美術館で開催。日本では、2008年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されて以来、18年ぶり、2度目の大規模個展だ。
総作品数が50点ほどしかないミュエクの彫刻作品を多数集めて個展を開催することは困難であり、11点の作品を展示する本展は貴重な機会。うち6点が日本初公開作となる。作家の主要作品を中心に初期から近作まで、制作活動全体を包括的に紹介し、作品の発展の軌跡を深く洞察する。

展覧会の中心を成すのは、巨大な頭蓋骨の彫刻100点で構成されるインスタレーション《マス》(2016〜2017)。
オーストラリアのメルボルンで開催された「NGVトリエンナーレ 2017」で初公開された後、フランス、イタリア、オランダ、直近では韓国で展示された。展示のたびに美術館の展示室の構造や特性に合わせて再構成され、本展でも約300㎡にわたるサイトスペシフィックな展示を予定している。

さらに日本初公開となる《買い物中の女》(2013)や初期の代表作《エンジェル》(1997)のほか、ベッドに横たわる巨大な中年女性の彫刻《イン・ベッド》(2005)などが出展。フランスの写真家で映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドが、作家のスタジオや制作過程を記録した写真作品と映像作品も公開され、制作の舞台裏を垣間見ることができる。

