公開日:2025年12月8日

「第9回横浜トリエンナーレ」が2027年4月から開催、アーティスティック・ディレクター決定

日本を代表する国際芸術祭。横浜美術館ほかで開催

左:インティ・ゲレロ 右:コスミン・コスティナシュ 撮影:ヴォルフガング・ティルマンス

横浜を舞台とする国際芸術祭が2027年に開催

「第9回横浜トリエンナーレ」が2027年4月23日〜9月12日に開催されることが発表された。会場は横浜美術館ほか。

企画を統括するアーティスティック・ディレクターには国際的に活躍するキュレーターの2人組、ルーマニア出身のコスミン・コスティナシュ(Cosmin Costinaş)とコロンビア出身のインティ・ゲレロ(Inti Guerrero)が就任し、横浜ならではの現代アートの展覧会を展開する。

主催は横浜市、(公財)横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会(委員長:近藤誠一[公益財団法人横浜市芸術文化振興財団理事長])。総合ディレクターは蔵屋美香(横浜美術館館長)。

横浜トリエンナーレは、2001年から横浜市で3年に一度開催する現代アートの国際展。これまで、国際的に活躍するアーティストの作品を展示するほか、新進のアーティストを広く紹介し、世界最新の現代アートの動向を提示してきた。

横浜美術館 外観 撮影:新津保建秀

アーティスティック・ディレクターについて

「第9回横浜トリエンナーレ」のアーティスティック・ディレクター選考委員会は、神谷幸江(委員長、国立新美術館学芸課長)、蔵屋美香鷲田めるろ(金沢21世紀美術館館長)、山野真悟(特定非営利活動法人 黄金町エリアマネジメントセンター 顧問)、アリア・スワスティカ(ビエンナーレ・ジョグジャ ディレクター)、イザベル・ベルトロッティ(リヨン現代美術館館長、リヨン・ビエンナーレ ディレクター)。

選出されたコスミン・コスティナシュとインティ・ゲレロのふたりは、「第24回シドニー・ビエンナーレ」(2024)の共同アーティスティック・ディレクターを務め、西洋の悲観的な終末論に対し、集団的な抵抗、喜び、希望に満ちた展望をもって乗り越えようとするキュレーションが高く評価された。ほか、セネガルの「ダカールビエンナーレ2018」のゲスト・キュレーターをはじめ、香港、台北、ソウル、サンフランシスコ、マニラ、クアラルンプール、バンコクなどでも展覧会の共同キュレーションの実績がある。

コスミン・コスティナシュは、1982年、ルーマニアのサトゥ・マーレ生まれのキュレーター、著述家。香港のアートスペース、パラサイトのディレクターを約10年(2011年~2022年)務め、2022年7月よりベルリンの世界文化の家(Haus der Kulturen der Welt[HKW])のシニア・キュレーター。2025年末までシニア・キュレーターを務めたのち、キュレトリアル・アドバイザーとして活動を継続する予定。

インティ・ゲレロは、1983年、コロンビアのボゴタ生まれのキュレーター、美術教育者。2011年より香港を拠点に活動しており、現在、香港城市大学修士課程(The Master of Arts in Creative Media[MACM])の客員教授。「ヨコハマトリエンナーレ2020」では、アーティスティック・ディレクターのラクス・メディア・コレクティヴのディレクションのもと、横浜美術館会場にて企画展示「エピソード04『熱帯と銀河のための研究所』」のキュレーションを担当した。

神谷選考委員長と、蔵屋総合ディレクターは、今回の発表にあたって以下のコメントを寄せている。

アーティスティック・ディレクターの選考にあたって(神谷幸江)

2027年に開催する第9回横浜トリエンナーレは、グローバル時代の代名詞として、各地で開催されてきた国際展の新たな在り方を目指しています。総合ディレクター・蔵屋美香(横浜美術館館長)は「世界のたくさんの地域との対話をサステイナブルな方法で組織する」方針を提唱し、これを踏まえてアーティスティック・ディレクターの選考がスタートしました。まず国内外の推薦委員13組から22組の多様な経歴を持つ候補者の推薦を受け、私たち6名の選考委員が二段階にわたる選考を行いました。

第1次審査で候補者を3組まで絞り込み、次に候補者たちを横浜に招聘、舞台となる横浜、その歴史、ポテンシャルにあふれたリソースを調査してもらい、具体的な企画を提案してもらいました。そうして描かれたプランを元に面談、ディスカッションによって最終選考を行いました。最終候補者はいずれも国外の出身で、数々の国際展を実現した実績、また現代社会と歴史とを再考しながら同時代の美術について言葉を尽くす経験にあふれていました。彼らとの未来のトリエンナーレの姿についての論議を経て、私たちはコンセプトにおいて、その視覚化において、特に創造的な提案に満ちたコスミン・コスティナシュ&インティ・ゲレロの二人組を次回横浜トリエンナーレを牽引するアーティスティック・ディレクターに選出しました。

彼らは「国際展は本質的にローカルなもの」と語っています。文化的企画を生み出し継続するために、ローカルな文脈の中で機能し、受け入れられることの必要性を十分に認識し、横浜の持つ交流の歴史に深い関心を寄せ、この地が築いてきた文化の生態系に関わる意気込みを持っています。ローカルなリアリティ、同時代の課題をゆっくりと考える、新たな横浜トリエンナーレの姿を彼らは想像させてくれました。思いがけない勢いで、つながっていた世界を分断する力が現れている中で、サステイナブルにつながることの実践が生まれていくことを心から期待しています。

明日を生きる人のために 第9回横浜トリエンナーレによせて:総合ディレクターからのメッセージ(蔵屋美香)

横浜トリエンナーレは、2001年にスタートした日本有数の国際芸術展です。2027年の第9回展で27年目を迎えます。わたしたちはこの機に、あらためて以下の4つの目標を掲げます。複雑な国際情勢、人工知能の台頭、先行きの見えない不安。こんな時代だからこそ、横浜トリエンナーレは、よりよい明日を生きようとするすべての人びとの営みに、アートを通して寄り添います。

①横浜という街に深く関わる
1859年の開港以来、横浜は、国際貿易港としてさまざまな文化の波を真っ先に受け止めてきました。現在は、約13万人169か国籍の人びとが暮らす、総人口377万人の巨大都市です。一つの地域(ローカル)でありながら、同時に世界と出会う場所。この横浜のユニークな特性を十全に生かした事業を実施します。

②横浜のリソースを活かす
横浜市は2004年より、文化による都市再生を目指す「創造都市」を政策に掲げてきました。この成果として、市内各所には長い活動歴を誇るいくつものアートの拠点があります。第9回展では、メイン会場となる横浜美術館とこれらの拠点を密につなぎます。多彩な見どころが街にネットワーク上にひろがります。

③市民にひらかれる
横浜トリエンナーレのモットーは、一貫して、「現代アートの良質な入門編」です。最先端の動向を丁寧に紹介することで、会場を訪れるみなさんの視野を世界へと広げます。同時に、専門知識がなくとも楽しめる作品を積極的に展示し、まずはアートに触れてみたい!という気持ちに応えます。

④GREEN×EXPO 2027の理念を共有する
横浜市では2027年、GREEN×EXPO 2027を開催します。第9回横浜トリエンナーレも会期を合わせ、「自然との共生や幸福感を、新たな明日の風景として可視化していく」というGREEN×EXPO 2027の理念の実現に共に取り組みます。

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