日本を代表する洋画家・小磯良平は、人物画、とりわけ静けさと品格をたたえた女性像によって知られている。本展の中心となる《日本髪の娘》は、1935年に発表され注目を集めたのち海外に渡り、長らく所在不明となっていた作品である。2008年に韓国で再び姿を現し、今回、約90年ぶりに日本での展示が実現した。本作の里帰りを軸に、館蔵品とあわせて小磯の仕事を見つめ直し、その絵画世界に新たな角度から迫る。
会場:神戸市立小磯記念美術館
会期:1月10日〜3月22日
堂本印象は、生涯にわたり全国13ヶ所の社寺で襖絵を手がけた画家。本展では、そのなかでも高い評価を受ける智積院の襖絵に焦点を当てる。1958年、宸殿再建に際して依頼を受けた印象は、時代と向き合う宗教空間のあり方を意識し、あえて大胆で現代的な構想を選んだ。批判を恐れず新しい表現に踏み込んだその姿勢は、伝統と革新の緊張関係を体現するものとして、いまなお強い印象を残している。
会場:堂本印象美術館
会期:1月20日〜3月22日
小村雪岱は、大正から昭和初期にかけて、日本画、書籍装幀、挿絵、舞台美術など幅広い分野で活躍した美術家。端麗で情緒に富む画風から「昭和の春信」と称された。本展では代表作を軸に、泉鏡花をはじめとする文学者や画家、出版人、舞台人との交流に着目し、協働のなかで形づくられた雪岱の仕事を見渡す。人との関係性から立ち現れる、雪岱芸術の豊かな広がりを伝える内容となっている。
会場:あべのハルカス美術館
会期:12月27日〜3月1日
笹岡由梨子は、映像を軸に、歌やキャラクターを組み合わせた独自の表現で注目を集めてきた作家である。自身の身体を反映した少し奇妙なキャラクターたちは、近年、映像と立体の関係を反転させながら存在感を強め、「愛」や「家族」といった主題を率直な歌として響かせる。本展は、滋賀県立美術館での初個展として、初期作から近作、新作までが並び、笹岡の表現世界を辿る構成。
会場:滋賀県立美術館
会期:1月17日〜3月22日
サラ・モリスは、ニューヨークを拠点に、幾何学的な抽象絵画を軸としながら、映像、壁画、ドローイングなど多様なメディアで制作を続けてきたアーティストである。ネットワークや建築、都市構造への関心を背景にしたその表現は、国際的にも高く評価されてきた。本展は日本初の大規模個展として、大阪中之島美術館が所蔵する《サクラ》を含む約100点を展示し、30年以上にわたる創作の展開を紹介。
会場:大阪中之島美術館
会期:1月31日〜4月5日
1926年から1989年まで続いた昭和は、戦争、復興、高度経済成長を経て、日本社会が大きく変貌した時代だった。美術もまたその影響下にあり、戦前・戦中・戦後それぞれで異なる表現が生み出されている。昭和100年となる2026年にあたり、本展ではこの64年間に制作された作品から100点を選び、画家たちが向き合った時代の空気を見渡す。激動の時代に刻まれた表現の厚みが、現代に伝えられる。
会場:福田美術館
会期:1月31日〜4月12日
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戦後、伝統と革新のあいだで揺れる日本画界のなか、京都では若い画家たちによる前衛的な動きが生まれた。本展では、1940年代以降に結成された創造美術、パンリアル美術協会、ケラ美術協会を軸に、日本画の枠そのものを問い直した画家たちの実践に焦点を当てる。京都画壇に根づいた批評精神と創造性を背景に展開した、戦後日本画の反骨的な潮流を「日本画アヴァンギャルド」としてとらえる。
会場:京都市京セラ美術館
会期:2月7日〜5月6日
滋賀県立美術館は、湖北地域を舞台にした3年連続企画「ASK 湖北における現代美術展」を始動する。第1弾は高島市・大溝地域で、アーティストユニットであるキュンチョメを招聘。琵琶湖と人々の暮らしから着想した「100万年の子守唄」をテーマに、3軒の民家を会場として作品が展開される。
会場:滋賀県立美術館
会期:2月21日〜4月19日
戦後、日本の前衛美術で注目を集めた女性美術家たちの実践は、なぜ十分に語られてこなかったのか。本展は、抽象芸術運動アンフォルメルの受容と、その後「アクション」が評価の中心となっていく過程を背景に、1950〜60年代の女性作家たちの表現にあらためて目を向ける。中嶋泉著『アンチ・アクション』のジェンダー研究の視点を手がかりに、力強さとは異なるかたちで時代に応答した創作のあり方を見直す。
会場:兵庫県立美術館
会期:3月25日〜5月6日
フランスを代表する画家ピエール=オーギュスト・ルノワールは、肖像や風景、静物、家族、裸婦など幅広い主題を手がけながら、絵画に喜びや美しさを見出し続けた。印象派を出発点としつつ、絵画の伝統にも学び、探究を重ねたその画業には、温かく愛情に満ちた眼差しが通底している。本展では、生誕185年を記念し、山王美術館コレクション約50点を通して、光と色彩にあふれたルノワールの世界を見渡す。
会場:山王美術館
会期:3月1日(日)〜7月31日(金)
2024年に生誕140年・没後90年を迎えた竹久夢二は、近代日本美術を代表する存在として再評価が進むいっぽう、同時代の人々にとっては、絵葉書や装幀、生活雑貨を通して親しまれた身近な表現者でもあった。本展では、大衆文化のなかで愛された夢二の仕事を起点に、夢二に強く惹かれた川西英や恩地孝四郎らの作品をあわせて展示する。大正から昭和にかけて描き出された都市生活やモダンな感覚、前衛と遊びの広がりが交差する内容となっている。
会場:京都国立近代美術館
会期:3月28日〜6月21日
現代日本を代表する画家・中西夏之の、没後10年にして初となる回顧展。1950年代後半から展開された制作を通して、中西が一貫して問い続けた絵画のあり方に向き合う。対象を描くことを目的とせず、具象と抽象のいずれにも収まらないその実践は、「絵はどのように現れるのか」「絵画の成立する場所とは何か」という根源的な思考に貫かれている。本展は、中西の仕事を手がかりに、絵画という営みそのものをあらためて考える場となる。
会場:国立国際美術館
会期:3月14日〜6月14日
中央アジアは、東西・南北の文化が交差する要衝として、人類史において重要な役割を担ってきた。本展では、その歴史を支えてきた存在として「商人(あきんど)」に着目する。シルクロードを舞台に、人や物、信仰や技術を運んだ商人たちの活動を手がかりに、古代の考古遺物から現代の刺繍や織物、民族衣装、宗教資料までを紹介する。交易を通じて育まれてきた中央アジア文化の多様性と交流の広がりが、展示空間に立ち現れる。
会場:国立民族学博物館
会期:3月19日(木)〜6月2日
葛飾北斎と歌川広重は、浮世絵風景画を代表する存在である。大胆な構図で自然を描いた北斎と、穏やかな色彩で人々の営みをとらえた広重。その対照的な表現は、国内外に大きな影響を与えた。本展では、実業家・原安三郎のコレクションから約220件を公開し、初公開作を含む名品を通して江戸の風景世界に触れる。
会場:京都府京都文化博物館
会期:4月18日〜6月14日
『怪談』で知られる小泉八雲は、異邦人として日本の民間信仰や自然観に向き合い、それらを物語として描き出した作家であった。本展では、怪異譚や随筆を通して、八雲が見つめた日本文化の奥行きと、その民俗学的な視点に迫る。
会場:大阪歴史博物館
会期:4月11日〜6月8日
「関西ニューウェーブ」を代表する森村泰昌、ヤノベケンジ、やなぎみわによる三人展。国際的に活動しながら関西を拠点としてきた3者が、新作を軸に、それぞれの活動を凝縮した空間を立ち上げる。美術とは何かという根源的な問いを抱えた表現が、美術館という場で交差する。
会場:大阪中之島美術館
会期:4月25日〜6月28日
大阪市立美術館では、開館90周年を記念し、特別展「全力!名宝物語 ―大阪市美とたどる美のエピソード」を開催する。1936年の開館以来、昭和・平成・令和と時代を重ねてきた同館のコレクションから、ゆかり深い名宝に焦点を当て、その来歴や背景にまつわる物語をたどる。美術品に刻まれた時間と、人や社会との関わりを通して、大阪市立美術館が歩んできた90年の厚みを感じさせる。
会場:大阪市立美術館
会期:4月25日〜6月21日
1990年代のイギリス美術を象徴する「YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)」に焦点を当てた展覧会が、2026年に東京と京都で開催される。1988年、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ在学中のダミアン・ハースト が主導した展覧会「フリーズ」を契機に、同世代の作家たちは既存の美術観を揺さぶる表現で注目を集めた。YBAはやがて国際的な潮流となり、1990年代の英国アートに決定的な影響を残している。
会場:京都市京セラ美術館
会期:6月3日〜9月6日
奈良「南都」に連綿と受け継がれてきた仏教絵画の系譜が「南都仏画」である。奈良時代の国際色豊かな天平仏画から、平安期の優美な礼拝画、鎌倉時代以降の復古的表現まで、その歴史は多彩に展開してきた。本展は、南都仏画の歩みを名品によってたどる初の試みである。米国ボストン美術館所蔵作品の里帰りをはじめ、奈良国立博物館との二大コレクションが集結し、幻の名刹・内山永久寺ゆかりの作品も紹介される。
会場:奈良国立博物館
会期:7月18日~9月13日
フィンランドのデザインハウス、マリメッコの世界を紹介する巡回展「マリメッコ展」が、2026年7月に京都文化博物館で開幕する。1951年の創業以来、マリメッコはファッションやインテリアの枠を超え、暮らしに新しい価値観を提案してきた。本展では、創業者アルミ・ラティアの言葉を手がかりに、ドレスやファブリック、アートワークを通して、受け継がれてきたプリントデザインの美学とその広がりを紹介する。
会場:京都府京都文化博物館
会期:7月4日~9月6日
明治初期に工部美術学校で教鞭を執り、浅井忠らを育てたイタリア人画家アントニオ・フォンタネージ。バルビゾン派やターナーの影響を受けつつ、詩情豊かな独自の風景画を築いた。本展では、トリノ市立近現代美術館の協力のもと初期から晩年までの作品を通してその画業を概観し、日本やイタリアに残した影響とともに、フォンタネージの全体像を描き出す。
会場:京都国立近代美術館
会期:7月18日〜10月4日
具体美術協会の創立会員・上前智祐は、具体解散後もその精神を受け継ぎ、絵画や縫い、オブジェ、版画など多様な技法を通して、生涯にわたり独自の美を追求した。本展では、とりわけ縫いの作品に注目し、初期の具象絵画から非具象絵画、立体や版画までをあわせて展示する。点の集積が生む色彩の諧調や、糸を縫い重ねることで立ち現れる造形を通して、上前の創作の核心とその魅力を探る。
会場:BBプラザ美術館
会期:9月15日〜11月8日
平安時代に紫式部が著した『源氏物語』は、日本文学を代表する王朝物語であり、後世の美術や文化に大きな影響を与えてきた。光源氏と人々の恋愛や人生を描く物語は、絵画や工芸、芸能へと多様に展開されてきた。本展では、源氏物語を題材とする絵画・工芸をはじめ、写本や注釈書、芸能との関わりを通して、その受容の広がりを紹介する。藤原定家校訂の「青表紙本」や、“幻の源氏物語絵巻”と称される「盛安本」など、約250件の文化財が集い、源氏物語が育んできた豊かな文化世界をあらためて見つめ直す機会となる。
会場:京都国立博物館
会期:10月6日〜11月29日
NHK「日曜美術館」は、1976年の放送開始以来、2000回を超えて続く長寿番組である。2026年に放送50年を迎える節目にあたり、番組の歩みと、そこで紹介されてきた多彩な「美」を振り返る展覧会が開催される。本展では、古代から現代美術まで、番組を彩ってきた名作・名品を5つの章で構成。あわせて、出演者たちの言葉を過去の放送から厳選して紹介し、高精細映像も交えながら、「日曜美術館」が美と人を結んできた軌跡をたどる。
会場:大阪中之島美術館
会期:10月10日〜12月20日
1753年開館の大英博物館は、海外でも屈指の日本美術コレクションを誇る。本展では約4万点の所蔵品から、喜多川歌麿《文読む遊女》や円山応挙《虎の子渡し図屏風》、葛飾北斎《万物絵本大全》挿絵素描など、日本初公開を含む江戸時代の絵画・版画を厳選。歌麿、写楽、北斎、広重らによる名品を通して、海を越えて受け継がれてきた日本美術の魅力を紹介する。
会場:大阪中之島美術館
会期:10月31日〜2027年1月31日